「よくある勘違い」
弁護士をしていると、国選弁護人より私選弁護人の方が、能力が高いだとか、より十分な弁護活動を行ってくれるとの誤解をしている人が大勢いるように感じられます。
しかし、このことは本当に大きな「勘違い」です。
そもそも弁護士は、私選弁護人としてある事件を受任中であっても、国選弁護人として別の事件を受任しているというのが通常であり、私選も国選も契約形態が異なるだけで、弁護活動を行っているのは、「同じ弁護士」に過ぎないのです。
しかも、弁護士である以上、自らの事件として受任したならば、私選であろうが国選であろうが、どちらも手を抜くことなく全力で弁護活動を行うというのが当然なのです。
したがって、私選弁護人と国選弁護人で、その弁護活動のきめ細やかさやその弁護活動能力に「差」があるなどということはないのです。
むしろ、国選と私選で、弁護活動に差が出ているような弁護士がいるのであれば、そのような弁護士は信用できないと考えるべきで、そのような弁護士の弁護活動や能力も疑ってかかるべきであると言えるでしょう。
「私選専門弁護士と国選弁護もやる弁護士」
国選弁護は一切やらず、私選弁護しか受任しないという弁護士も世の中には存在します。
しかし、これは単なる弁護士としてのビジネスモデルの違いにしか過ぎず、私選弁護しか受任していないから、能力が高いということにはならないのです。
むしろ、国選弁護を行っていない弁護士においては、刑事事件をほとんど経験したことがないとか、年に数件しか刑事事件を受任していないという弁護士も大勢おり、能力的に疑問がある場合も多かったりもします。
さらに、我々弁護士の世界の認識では、刑事事件に精通している弁護士は、国選弁護を積極的に行っているというのが一般的であると言えます。
というのも、刑事事件の9割は国選弁護事件であり、刑事事件の基本は国選弁護事件にあると考えられているからです。
また、刑事事件のスキルをあげるには、より困難な事件を経験することが重要であるものと考えられるところ、殺人事件などの厳しく困難な事件のほとんどは、国選弁護事件であることから、刑事事件を熱心にやっている弁護士ほど、国選弁護を積極的に受任しているのです。
逆に言えば、私選弁護しか受任していない弁護士は、厳しく困難な事件を受任する機会、経験を有しておらず、能力的に劣っているという可能性すらあるものと言えます。
この点、私の所属する千葉県弁護士会においても、刑事事件に精通している尊敬できる弁護士は、皆さん国選弁護を積極的に受任しております。
以上のように、私選弁護しか受任しない弁護士が必ずしも刑事事件の能力が高いわけではないということがわかっていただけるのではないかと思います。
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