早期の弁護人選任が最も重要である事件というのが強制わいせつや強姦、同致傷等のわいせつ系事件です。
これらの事件は、それぞれかなり重い刑罰が規定されています。
具体的には、
強姦 3年以上の有期懲役
強制わいせつ 6月以上10年以下の有期懲役
集団強姦 4年以上の有期懲役
強制わいせつ致死傷 無期または3年以上の有期懲役
強姦致死傷 無期または5年以上の有期懲役
集団強姦致死傷 無期または6年以上の有期懲役
と規定されています。
起訴(裁判になること)され有罪となってまった場合には、
かなりの重い刑罰が下される可能性が極めて高いのです。
他方で、起訴されなかった場合には、
当然のことながらそれまでと何ら変わりない通常の生活を送ることができるのです。
このような事情から、わいせつ系事件においては、
起訴されないようにするための弁護活動が極めて重要になってくるのです。
では、起訴されないためにはどうすればよいのでしょうか?(基本的に自白事件について)
この点、強姦及び強制わいせつ事件に関しては、「親告罪」とされています。
親告罪とは、被害者からの告訴(犯人を捕まえて、刑事処罰を与えてほしいという意思表示)がなければ
起訴(裁判)することができないこととされている犯罪のことを言います。
したがって、起訴されないようにするためには、被害者の方と話し合い、被害者の方に許してもらえさえすれば良いのです(告訴取消)。
そこで、その被害者との話し合いを行うために弁護士を選任することが極めて重要になってくるという訳なのです。
先ほど述べたように、被害者の方の許しの有無(告訴取消)によって、
一方は刑務所での長期間の服役となり、他方は、何ら変わりない日常生活を送ることができることになるというのですから、
この被害者の許しを得るための活動というのは極めて重要なものであるということは理解していただけると思います。
そして、この被害者の許しを得るための活動の時間というのは極めて限られています。
というのも、逮捕されてしまってから起訴されるまでの時間というのは、最大でも23日間にすぎないからです。
したがって、1日たりとも無駄にすることはできないことからして、できるだけ早期の弁護人選任が必要となってくるのです。
他方で、否認事件(わいせつ事件などやっていないという場合)においては、
犯罪を犯した記憶がないのですから、被害者に許してもらうというのも、おかしな話ですので
原則的には、被害者の方に許してもらうための活動は必要ありません。
否認事件においては、弁護士による的確な助言を受け、
自己の記憶にしたがって間違いのない供述を行っていけば良いだけです。
そして、弁護人に被害者とされる者が供述している事項について、
反論等をしっかりしてもらい、自己の嫌疑を晴らしていくことになります。
このような活動を行っていくためにも、早期の弁護人の選任は必要不可欠と言えるでしょう。
もっとも、強姦などが親告罪であることは、否認事件においても異なりませんので、
告訴がなければ裁判になることはありません。
そこで、場合によっては、相互の誤解を解き紛争の解決を図るための話合いを行い、
告訴の取り消し等に応じてもらうということも考えられます。
この点に関しては、弁護士によっては、「否認事件だから被害者と話し合う余地などない」などと
頭ごなしに告訴取消等の可能性を否定し、そのような活動をしない人もいるようですので、
そのような弁護士にあたってしまった場合には、即座に弁護人を変えることも検討したほうが良いかもしれません。
では、強姦致傷等のように親告罪ではないわいせつ事件ではどうすればよいのでしょうか?
確かに、このような事件については親告罪とはされていません。
しかし、告訴がなければ、強姦致傷事件なども起訴されない場合がほとんどであるというのが実情なのです。
したがって、強姦や強制わいせつ事件と同様の弁護活動が極めて重要になってくるのです。
弁護人の選び方
被害者の方との交渉の善し悪しについては、その弁護士個人の資質によって異なるとしか言いようがありません。
つまり、刑事事件専門の法律事務所だからといって、
所属弁護士が全て被害者の方との交渉が上手いのかというと全くそうではないということです。
したがって、弁護士個人としてその弁護士はそのような交渉が得意なのかどうかということは判断していかなければなりません。
やはり結局、弁護士個人としての経験を尋ねてみる他ないということになってしまうかもしれません。
その他、良く見かける広告などで、
「裁判員裁判である強制わいせつ致傷事件や強姦致傷事件などで、執行猶予付き判決を取りました」などと書いてあったりしますが、
このような弁護士は、なんとも微妙な感じがしたりします。
というのも、先ほど述べたように、起訴される前に示談等に至っていれば、その裁判自体あり得なかったものにすぎないからです。
しかも、執行猶予が付いているということは、間違いなく起訴された後などに、被害者の方に対し示談ないし被害弁償等がなされているものと考えられます。
そして、私が見聞きするところによると、そのような事件に限って、そんなに多額の被害弁償金を支払っているのかとビックリしてしまうことが多かったりします。
そのような事件を見るたびに、私としては、起訴される前の弁護士の動きが悪かったのではないかという疑問を持ってしまうというのが本音のところなのです。
そもそも、裁判員裁判になる事件というのは、執行猶予が通常は付かないような重い事件ばかりなのです。
そのような重い事件の中で、例外的に執行猶予が付くような事件というのは、
そもそも事件自体の内容として、それほど悪質な事件ではないのです。
したがって、起訴される前である捜査段階において、
(執行猶予付き判決が下された)裁判時において存在しているような事情を揃えれば、
そもそも起訴されない程度の事件に過ぎないのです。
このように、裁判員裁判において、執行猶予付き判決をもらっているという事実は、
起訴前の捜査段階における弁護活動が不十分であったことを推認させるとさえ言えるというわけなのです。
(もっとも、もちろん事件には様々な事情がありますので、100%そうであるという訳ではありません。)
したがって、そのような弁護士さんに対しては、どうして起訴されてしまったのかをしっかり確認することが大事であると思われます。
私の経験
私の場合、幸か不幸かかなりハードなわいせつ系事件を依頼され、
それを受任し弁護活動を行ってきた経験が数多くあります。
直近では、今月、起訴されれば裁判員裁判となる強制わいせつ致傷事件を受任しましたが、
即座に被害者の方と示談をしていただき、
告訴取消による、不起訴処分(起訴猶予)によって、依頼者の方には、10日間の勾留のみで社会復帰していただきました。
お問い合わせは、
プロスペクト法律事務所
弁護士 坂口 靖 まで
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